来年のNHK大河ドラマ「花燃ゆ」(1月4日から、日曜後8・00)の放送開始まで2か月を切った。
吉田松陰の妹という歴史上あまり知られない人物が主人公だけに、今ひとつピンとこない人もいるのでは?
乏しい史実を起伏に富んだ脚本で補い、現代劇風の装いも施した「意欲作」の見どころを紹介する。 主人公・文(ふみ)(井上真央)は、長州藩出身の幕末の思想家・吉田松陰(伊勢谷友介)の妹。 松陰が主宰した松下村塾からは、高杉晋作(高良健吾)、入江九一(要潤)らが巣立っていった。
文は、既存の常識にとらわれない兄を誇らしく思うが、安政の大獄で兄は刑死してしまう。
文は、塾生の久坂玄瑞(くさかげんずい)(東出昌大)と結婚するが、長州藩が薩摩・会津連合軍との
戦いに敗れて久坂は自刃。文は毛利家に仕えることになり、明治維新を迎えた後、亡き姉(優香)の夫だった
群馬県令・楫取素彦(かとりもとひこ)(大沢たかお)と再婚する――。
ざっとこんな物語だが、さらに久坂には愛人と隠し子までおり、最終的に文は子どもを引き取るという波乱万丈の物語。
脚本の大島里美と宮村優子が史実に照らし合わせながら“女の一生”を創作していった。 しかし、今なぜ吉田松陰の妹なのか?
この点を制作統括の土屋勝裕チーフ・プロデューサー(CP)が解説する。
「元々、長州藩を舞台に吉田松陰を取り上げたかったが、早くに亡くなっているのでどうしようかと思っていたところ、
陰の人物でもある楫取素彦を知り、興味を持った」
しかし、男性目線の物語だと日曜夜に楽しく見られないとの不安も。
長州の女性たちが、海岸の砲台作りを手伝うなどして活躍したことを知り、女性を主人公にしようと文が浮上した。
塾生たちを見守り、2人の夫を支えた文の生き方には、現代に通じるものがあるという。
「東日本大震災後、自らがヒーローになるよりも『今ここにある幸せを守りたい』との気持ちになる人が増えている」
と土屋CPは指摘。文の人生に仮託してそれを描くことで、ホームドラマ的な味わいを醸し出そうと試みる。
また、松下村塾での若者たちのやり取りは学園ドラマ的で、文が毛利家に入ってからは女同士の戦いのドラマ。
もちろん幕末から維新を駆け抜けた男たちの命懸けのドラマという要素もあり、現代劇としても十分に楽しめる展開を盛り込む。
土屋CPは「至誠の人たちの生きざまを描く」と強調するが、いつもながらの「大河」同様、
人気俳優がこれでもかと登場。歴史時代劇と思わずに見た方が意外と楽しめるかもしれない。
NHKは作品を宣伝しようと、大河ドラマ史上初となる公式PRキャラクターを制作し、公募により「もゆるん」と命名した。
もゆるんは、文にちなみ、2月3日生まれ。文が持つ筆をモチーフにした妖怪で、松下村塾にすんでいるとの設定だ。
10月に東京・世田谷の松陰神社で開催された「第23回萩・世田谷幕末維新祭り」には着ぐるみキャラとして登場。
その後も同時に制作した関連キャラと共にPR活動を展開中だ。
http://www.yomiuri.co.jp/culture/news/20141111-OYT8T50104.html